コラム「足あとを灯す」『第16編:最先端を貫く「理念」という根』
第16編:最先端を貫く「理念」という根
俳優のディーン・フジオカ氏が、一九九〇年代末に米国ワシントン州タコマにあるパシフィック・ルーセラン大学(PLU)へ留学していたことをあるテレビ番組で知りました。私自身、一九九三年から三年続けて学生を引率し、まさにそのタコマのPLUキャンパスを訪れた経験があり、緑豊かな学び舎の記憶が鮮やかによみがえってきました。
インターネットやITが急速に台頭し始めた当時の米国で、彼が学んだ最先端の技術環境において最も強調されていたのは、単なる知識や技術の習得ではなく「理念」であったといいます。どれほど時代が移り変わり、道具が高度化しようとも、それを何のために、いかに人間と社会のために用いるのかという「根底にある志や哲学」こそが本質であるという教えです。
この視点は、私たちが向き合う乳幼児教育や障がい児支援の営みにも深く響き合います。新しい療育手法や保育の制度、デジタル技術を柔軟に取り入れることは大切ですが、それらを支える心棒となるのは「一人ひとりの命をかけがえのない存在として愛する」という法人の不変の基本理念にほかなりません。
AI技術が先走る時代だからこそ、人としての温かな哲学が問われます。これからもぶれない基本理念をすべての実践の真ん中に据えて歩んでまいります。(社会福祉法人愛の園福祉会・学校法人堀口学園理事長)